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安部公房 笑う月

安部公房 笑う月

安部公房の17編の断片的な随筆集。新潮社。
睡眠誘導術
笑う月
たとえば、タブの研究
発想の種子
藤野君のこと
蓄音機
ワラゲン考
アリスのカメラ
シャボン玉の皮
ある芸術家の肖像
阿波環状線の夢
案内人
自己犠牲
空飛ぶ男

公然の秘密
密会

安部公房の『笑う月』は、彼の最後の小説作品であり、未完のまま残されたものです。1992年に発表されたこの作品は、安部の文学世界を集約するような雰囲気をまといながらも、未完成であるがゆえにどこか途切れた夢のような印象を与えます。読んだ人は「結局どういう話だったのか」と戸惑うかもしれませんが、それこそが安部作品らしさでもあるんですね。

安部公房という作家は、一貫して「人間存在の不確かさ」や「現実と非現実の境界」を描き続けました。『砂の女』や『箱男』のような代表作では、現実社会における人間の疎外や孤独、そして存在の不条理がテーマになっていました。その延長線上にある『笑う月』でも、彼は現実と夢、日常と非日常を自由に行き来しながら、人間の存在そのものを揺さぶろうとしています。

タイトルの「笑う月」という表現からして、すでに不穏です。月は古来から人間の想像力を刺激してきた存在ですが、普通は黙って空に浮かぶだけのものです。それが「笑う」となると、静かで冷たいイメージのはずの月に、人間的な表情や意志が与えられてしまう。これは現実ではあり得ないことですよね。安部はそういう「ほんのわずかなズレ」から、読者を異界へ引きずり込むのが得意でした。

『笑う月』の中にはいくつかの短編的な要素が組み込まれています。夢と現実のあわいで展開する断片的な物語、主人公の内面の混乱、そして社会からの違和感。どこかで見たことがあるようで、どこか現実感が薄い。読んでいると、自分自身が夢の中にいるような気分になる。これこそが安部文学の特徴であり、同時に『笑う月』を最後の作品にふさわしいものにしている理由だと思います。

また、この作品を読むと「老い」や「死」といったテーマも強く意識されます。安部公房自身が亡くなる直前に書いていたものですから、その視点はどうしても透けて見えてしまうんですね。夢と死の関係、存在が溶けていくような感覚、そして月という象徴的なモチーフ。これらはまるで、安部自身が自分の終末を予感していたかのように響きます。

ただし、『笑う月』は未完であるため、物語としてのまとまりや結論はありません。普通の小説のように「起承転結」が整っているわけではなく、断片的で、余白を多く残しています。その余白をどう読むかは読者次第で、むしろ未完成だからこそ、安部文学の核心に触れる体験ができるとも言えます。まるで作者が読者に向かって「君たちの想像力で補ってくれ」と問いかけているようです。

安部公房は、日本文学の中でも異色の存在でした。戦後の文学者たちがしばしば政治や社会と密接に関わるテーマを書いていたのに対し、安部はより普遍的で抽象的な「人間そのものの存在不安」を追い続けた。だからこそ海外でも高く評価され、『砂の女』などは翻訳されて世界中で読まれました。『笑う月』はその集大成というより、むしろ「次にどこへ行こうとしていたのか」を垣間見せてくれる作品です。

最後の未完の小説として『笑う月』を読むと、どうしても「ここからさらにどんな世界を描こうとしていたのだろう」と想像してしまいます。安部がもう少し長生きしていれば、もしかしたら新しい段階に到達していたのかもしれない。だからこそ、この作品は「失われた未来」を思わせる、ある種の寂しさもまとっているんです。

つまり『笑う月』は、完結した物語として楽しむよりも、安部公房という作家の最晩年の思考を覗き込む窓のように読むべき本だと思います。夢と現実の境界が溶け合い、存在そのものが揺らぐ感覚。そこに漂う死の予感。完成していないからこそ、むしろ「安部公房が最後まで問い続けたものは何か」を考えるきっかけになるのです。

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気が狂う?「ドグラマグラ」解説

文自体はそこそこ長いですが、すぐに読めます。どんな内容かは、読めばわかるので読めばいいと思います。読むと気が狂うと言われるそうですが、狂いません。別に普通のことが書いてあるだけです。
気が狂うと言われますが書評のようなものを読んで「読んで理解した気分」になるのは避けた方がいいと思いますので、内容は本文を読めばいいことです。「読むと気が狂う」とか、その内容を数行の解説文で「一時的に盛り上がるため」にしてしまうのはもったいないことです。
この本を読んで気が狂うことがなかったのは、元々気が狂っていないからかもしれません。多数決で言えばキチガイはこちらということになりますが、別にそれでも構いません。「この女が!」と言われても、実際には男だったら、別になんとも思わないのと同じように、女と言われても、本当は男なのだから、女と言われようが事実はぐらつきません。多数決も、権威による裏付けも必要ありません。
「ドグラマグラ」
気が狂う?「ドグラマグラ」解説

なぜ「気が狂う」「読むと精神がおかしくなる」というフレーズがよく飛び交うのでしょうか。その原因はわかっています。錯覚が取れかけるからです。よくわからないままに、みんなの意見を寄せ集めて「気が狂うらしいよ」と多数決のような決定の仕方はやめておいたほうがいいでしょう。

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みうら じゅん

みうら じゅん は、日本の漫画家、イラストレーター。本名、三浦 純。京都府京都市出身。東山高等学校、武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。
みうらじゅんは小学生時代から仏像と怪獣が好きな少年で、京都や奈良の仏像をめぐる。仏像が好きすぎて仏教系の学校に入学したが、途中でエロに興味が出て仏像に飽きる。みうらじゅんの本さよなら私がおすすめ。女性向け雑誌に掲載されていただけあり、今までにないみうら氏の真面目な姿勢。
自分なくしこそが人生を楽しく生きるコツ、
というのがみうらじゅん氏らしい。
肩の力が抜ける、にやっとほくそ笑んでしまう作品。
いいこともあれば、よくないこともある。始めがあれば、終わりもある。そもそもは何もないところから生まれ、何もないところに帰っていくだけのこと。「自分」という存在があるなんて思っているから、人生は生きづらいんだ。自分探しや、ないものねだりはやめよう。キープ・オン・バカ。生きるのが少し楽になります。

みうらじゅん さよなら私

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